のがみ農場便り

2012年07月

命と引き換えに③

そこからは、字の如くまさに必死。

辺りを見回して、身を委ねても大丈夫そうな岩や草を目がけ、

力の限り、移動する。

自分からすれば、決死の移動だが、上から見れば、ただの横移動にしか見えないらしい。


「お~~~い!」


「こっちから回ってこいよ~~!」



誰がなんといっても、当てにはならない。


自分の体重がかけられるかどうかの判断、手を伸ばして大丈夫か、体勢を崩してまた落ちてしまわないか状況をすべてその時の自分の判断にかけるしかない。


相変わらず斜め横への移動を続けるしかないが、少しずつ掴んでも大丈夫なモノの判断がつくようになってきた。


少しずつ。


登れている。



少しずつ。




半分、まで来ただろうか、


また、雪になる。


どうやって登ればいいのか、もはやわからない。


何をつかんでいいのか。




さすがにもう参った、とやっぱり思えてきた。





ところが、



たまりに堪えかねて、



上から、達夫さんが降りてきた。




「なおき、



よくぞ、命こそあったな。」



「ザックを持ってやる、よこせ」




こんなところを、よくここまで降りてこられたもんだ。



背負ったザックを外すのも一苦労だ。



ザックを外して渡すと、難なく達夫さんはそれを担いだ。



達夫さんは若いころはスキーが得意で、雪山には慣れている。



もう一人の良博さんも、秋田県の出身で、雪を歩くことに苦労はない。



ただ、降りて来てみると、予想以上に厳しい斜面であることを理解したようだ。



「俺の後をついて来い。」



それだけ言うと、黙々と斜面を登っていく。



「もう少し待って、ゆっくりと。」



なんて、言える状況じゃない。



二人とも未だに危ない状況には変わりがない。



ただ、大きな勇気が自分の中に湧いてきた。



あきらめかけたところに、道なき道が出来ている。



それを真似して、ついていけばいい。



ガクガクして動けなかった足底を、見よう見まねで、地面に向かって、立てる。



腕も少し伸びる。



当然、腰は斜面から遠のく。



スパイダーマン、のような格好だ。



しかし、実際、この方が、地面を噛む。



まっすぐ、登れる。




もう少しだ。



雪が一番ないところまで移動したら、あとは最後の勇気を振り絞って、雪を登る。



もう、怖いなど言ってる余裕すら与えてもらえない。



淡々と、何事もなかったかのように、登る。



上では、良博さんがステッキを最大に伸ばして、待ち構えている。



もし、自分がこれをつかんで、自分の重力が勝ってしまったら、間違いなく2人とも、落ちる。



「なおき!



もう少しだ!頑張れ~~!!!!」



手を本当に、このステッキにかけていいのか、掴んでいいのか、迷った。



道連れにしないだろうか。



勇気。



精一杯、自分の出来る範囲で、引っ張りすぎないように、かつ、自分の身を預けられるように、



力いっぱい、そのステッキをつかんだ。



「ようし、引っ張るぞ~!」





ようやく、右足ががつき、やっと左足を持ち上げた。左足を着きたいが、膝しか着けなかった。





「よかったな~!!!」



「ありがとうございました。よかった~。」





安堵して片膝をついたところは、まだ雪道の途中だった。



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中鎖脂肪酸の効果

中鎖脂肪酸を農場で使いだしてから約1ヶ月が経過。

農場では、生まれてからすぐの子豚に液体タイプを2.5ml経口投与する。

生まれてから間もない子豚たちは、内臓がまだ十分に機能できていないため、母豚からのミルクで栄養補給するわけだが、

小さく生まれてきた子豚や元気のない子豚たちは、母乳を吸う力もなく、栄養吸収が難しい。

そこで中鎖脂肪酸を与えることで、直接肝臓へエネルギーを送り込むことが出来るため、とりあえずシャキッと

なってくれれば、おのずと母乳も飲めるようになり、エサも食べる元気が湧いてくる。

場合によっては連続で補給してあげると虚弱の子豚でも回復してくることが期待できる。

そのために、ビタミンも混合添加してある。

液体商品の黄色っぽいのはそのビタミンの色を表す。


取引先の農場でも使うところが増えてきた。

使い方を真似して、うちの農場でも粉末タイプを人工乳後期に混ぜて給与するようにしたが、

確かに、離乳子豚の状態が良好だ。

Nファームでは、見に見えて違いが出てきたそうだ。

子豚が背割れを起こしてきた。

いわゆる、健康状態が良好であることの証しだ。


一番大きくなりたいと、身体が言ってきている時に、どれだけ食い込みを上げてやれるかが、

農場管理の技術だ、と。


だから、スタートダッシュは、最も大事なところである。


メーカーによると、

子牛の生産農家から肥育農家へ移った時に、相当ストレスが掛かって、一度体重を落とすらしい。

これが、中鎖脂肪酸を移動の際、2週間給与してあげることで、大分改善されているとか。


とすれば、豚でも、移動や、飼料の切り替え時に2週間給与すればいいのか、と問うと、

全くその通りだという。

その方がコストもかからない。


なるほどね。

イケそうである。


どんどん結果を出して、商品を紹介していきたいと思う。








命と引き換えに②

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ガツッと大きな衝撃を左足に受けたと同時に、


身体がフワッと浮き上った。


一瞬、着地した後の状況が、変わるんじゃないかと期待した。


ところが、


勢いが、増した。


「いよいよ、マズイ」


衝撃のおかげで、身体は雪の地面を向いている。


実は、衝撃は左足だけではなかった。


突起した岩岩に何度となくぶつかり、体勢を変えられていたのだ。



スピードが緩む。



・・・・????



雪が、一度切れている。



・・・・・・・・





「止まれ、」



爪が剥がれるんじゃないかと思うほどに、指を立て、もがく。





少しずつ、だが、急に、



スピードは緩み、



何とか、止まった。



「フーッ、」



つかの間だった。



一端止まったはずの体は、また、下降を始める。



上から見れば一見、ごつごつしたところは踏ん張れそうに見えるのだが、



ここにあるそれらは、



まさに、指ではねても転げるような石や岩ばかりである。



怖くて、



足は、ガニ股になり雪面にへばりついている。



これなら掴めるかもしれないと思った草の束を、渾身の思いで握りしめる。



それが、



悲しくも、すぐ根っこからはがれてしまう。



もがく度に、折角一度停止した身体は、また下降の一途をたどろうとする。



「死ぬのか・・・」



「死にたくない・・・・」



冗談でもなく、



本当に、死と向かい合った。



上のパーティーも、同じことを考えていた。




普段、仕事のことの方が考えることが多いとイメージしていたはずなのに、



この時は、



家族が出てきた。



そこで、 



今度こそ、しっかり止まったようだ。



左足が、燃えるように痛い。



指を1本ずつ、丁寧に動くのか確認する。



手も動く。



足は?



一度足首を骨折したことがあるが、その痛みではないような気がする。



幸いなことに、頭は打っていない。



勘違いでもいい。



動ける。



やっと、上からみんなの声が聞こえた。



「お~い!!」



「なおきぃ~!!!!」



「だいじょ~ぶかぁ~~~~????」




ひょっとしたら、助かるかもしれない。




怖気づいた足が、なかなか言うことを聞かない。




けど、もう、行くしか、ない。




滑落したその地点は、すでに落ち始めてから200m近くのところまできていた。









命と引き換えに①

本当にたった、一瞬の出来事だった。


かけたはずの、右足が、滑る。


用心して履いたアイゼンが、実は逆効果であったことに、この時気付いているはずが無い。


表面が解けだした雪は、まさに、靴底の裏側に付きやすくなっていた。


ましてや、アイゼンをつけた分、なおさらだ。


1歩目で、靴の裏に、雪をつけていたのかもしれない。



しかし、そんなことは、もう、どうだっていい。


右から左下にかけて作られた雪渓は、朝日を浴びて、緩やかにきれいな解け方をしていた。


右足が、滑る。


とっさに体制など、立て直せることなど、出来やしない。


左下へ、スライディングをするかのように、


背負ったザックが重く、当然、ザックは下を向き、体は仰向けを強いられる。


一度、何を思ったのか、両脚を浮かせてみた。


常識的には考えられない行動だ。


当然のことながら、ザックは雪ソリのような役目になり、


勢いをつけ、下降していく。


すぐさま状況を把握し、脚をつける。


両手のひらを、ビタッと地面に張りつける。


背中がザックで押され、仰向けの状態で背中に大き目の枕を入れ込んだよな体勢だ。


一度勢いに乗った体は、そう簡単には止まらない。


さらに、勢いは、増すばかり。



「やばい!」



左手に持っていたステッキを、地面に差し込んで止まろうと思った。


身体を左にひねる。


「岳」という映画があった。


小栗旬が演じる島崎三歩が、冬の雪山で滑落しそうになり、手に持っていたピッケルを両手で引っ掛け、滑り落ちるスピードをだんだん緩め、なんとか踏みとどまったシーンがある。


それは妙に印象に残るシーンだった。


なぜ、


わからないが、このわずかな瞬間に、思いついた。


左手のステッキを取ろうとする。


が、どうも無理らしい。


ステッキは手元から離れないように、最上部に帯の輪がつけてあるのだが、


左手首にその帯が掛かっているため、先端を持てない。


ステッキ自体を腰から足元にかけての長さに伸ばしてあるために、


右手を一瞬のうちに左足首のところまで、


転びながら伸ばすことなど、不可能だった。



「チクショウ!」



その時、




ガツッ!!! ・・・・・




左足に、



大きな衝撃が走った。



すでに、踏み外した地点から100mは遠ざかっていた。


ネバネバ大好き②

本日も食べてきました。

チェスト館。

ネバネバぶっかけ。

今度はうどん!

最高だね。


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