安堵感と恐怖心で、心拍数は上がったままだ。


足は未だにガクガクと震えている。


ザックを開け、ペットボトルの水を一気に飲み干す。


息切れが止まらない。



かれこれ、1時間が経過した。


帰り道は、ない。


来た道以外は。


行くしかないのだ。登るしか、ない。


拾った命。一度失いかけた命。


みんなが落ち込んでいる。


幸い、登りなら、何とかいけそうだ。


「行けます!」


左足はズボンがズタズタに破け、真っ赤ににじんでいる。


気にしたら、何もできない。見るわけにはいかない。


山では、歩ける奴は歩け、が鉄則らしい。


「じゃあ、行くぞ。」


2人に挟まれて、登りを再開した。


俺は、どれだけの人に支えられてきたんだろう。


歩きながら、ふとそう思うと、涙が止まらなかった。



明るく元気よく、


無理矢理でもいい。


楽しく登ろうと誓った。



P1010059